コロナ感染と不妊治療への影響

こんにちは。
台風6号の影響は大きく、沖縄や九州をはじめ様々な場所で大きな雨風の影響が続いています。
台風に気を付けて過ごしていかなければなりませんね。
本日は、コロナ感染と不妊治療との関連についての調査について取り上げようと思います。

中国中南大学のFen Tian氏らは、排卵を誘発する調節卵巣刺激法(controlled ovarian stimulation;COS)を利用した不妊治療を受けているカップルに対する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の影響を検討し、COS治療中に核酸検査が陰性だったカップルに比べると、どちらかが検査陽性になったカップルでは、良質な卵母細胞、胚、胚盤胞を得にくかったと報告した。

SARS-CoV-2のヒト細胞への感染には、ウイルスのスパイク蛋白質がヒト細胞の表面に存在するACE2受容体に結合した後に、膜貫通型タンパク質分解酵素であるTMPRSS2で切断される必要がある。男女ともに生殖器系にはACE2とTMPRSS2が発現しているため、SARS-CoV-2感染に対して脆弱な可能性が考えられる。妊婦がSARS-CoV-2に感染すると、感染していない妊婦と比べて重症化する割合や早産などが多いことも報告されている。しかし、生殖補助医療(ART)を受けている不妊カップルがSARS-CoV-2に感染した場合の影響は明らかではなかった。

 そこで著者らは、COSを利用しているカップルのSARS-CoV-2感染が、卵母細胞と胚に及ぼす影響を検討するために、多施設後ろ向きコホート研究を計画した。対象は、2022年10月1日から2022年12月31日に、中国の4つの省にある生殖医療センター7施設で、COSを受け体外授精(IVF)または卵細胞質内精子注入法(ICSI)が実施された全てのカップルで、COS期間中にSARS-CoV-2核酸検査を受けている場合とした。卵母細胞を凍結保存中のカップルなどは除外した。検査結果から、男女ともに陽性またはどちらか1人が陽性だったカップルを陽性群とし、2人とも陰性だったカップルを陰性群に分類した。

主な結果は、利用可能な胚と胚盤胞、および最高品質の胚と胚盤胞率でした。副次的結果は、回収した卵母細胞の数、成熟卵母細胞率、正常な受精(授精後 1 日目に 2 つの前核が観察された [2PN])、卵母細胞の変性、2PN率、および胚盤胞形成率でした。

不妊治療を受けている585組の異性愛者カップルを分析対象とした。女性の年齢は中央値で33歳(四分位範囲30~37歳)で、不妊歴は2年(1~4年)だった。53.7%が2次性の不妊で、58.3%は女性側の要因による不妊だった。このうち135組がSARS-CoV-2陽性グループに、450組は陰性グループに分類された。両群の特性は同様だった。

 評価項目の中で、両群間に有意差が見られたのは、以下の項目だった。陰性群に比べ陽性群では、質の高い胚の割合が低く(52.1%と47.3%、オッズ比0.83:95%信頼区間0.71-0.96)、質の高い胚盤胞の割合も低かった(11.5%と7.1%、オッズ比0.59:0.45-0.77)。さらに、利用可能だった胚盤胞の割合(35.8%と28.2%、オッズ比0.70:0.59-0.82)、胚盤胞形成率(45.3%と33.3%、オッズ比0.61:0.52-0.71)も低かった。

 感染陽性となったのが女性だった場合、陰性群に比べ、成熟した卵母細胞の割合(ICSIの場合)、分割を開始した2前核期胚の割合、質の高い胚の割合、胚盤胞形成率、利用可能な胚盤胞の割合、質の高い胚盤胞の割合が有意に低かった。

 感染陽性となったのが男性だった場合には、利用可能な胚盤胞の割合、質の高い胚盤胞の割合、胚盤法形成率が陰性群より低く、カップルの両方が感染した場合には、胚盤法形成率が陰性群より低かった。

 これらの結果から著者らは、COSを受けているカップルのSARS-CoV-2感染が、胚と胚盤胞の質に悪影響を及ぼす可能性が示唆されたと結論している。そのため生殖医療に関わる医師は、治療中のカップルの感染に注意を払う必要があると述べている。

https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/report/t344/202308/580568.html 日経メディカルhttps://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2807190 JAMA Network

既に、妊娠中のコロナ感染については調査はされており、早産のリスクが高まるなどの調査結果が出ておりましたが、不妊治療中の方への影響ということに関しての調査を初めて見て、コロナ感染が成熟卵の割合に相関してくることや、胚盤胞の形成率に関連してくることを知りました。
2023年3月以降コロナ感染について日本では5類となり、インフルエンザと同じような扱いに変化しました。
まだまだ暑い日が続きマスクの着用が難しい日もありますが、不妊治療を受けるにあたり、引き続きこれらの予防は必要となってくるかと存じます。
熱中症やその他の病気にも気を付けて参りたいですね。

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