深めたい不妊治療への理解

こんにちは。
7月になりました。2014年ももう折り返したのですね。

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さて、日本は「不妊治療大国」。6月26日の日経新聞電子版にそんな見出しを見つけました。
現在日本に出生する30人に1人が生殖補助医療によるものであり、代理出産を認める法案は来年の成立を目指しているとの事です。

昨日放映された、海外での卵子提供を取材した某報道番組では、海外で治療を受けている実態がある以上、早急に法制化を勧め、国内で治療が受けられるようにすべきであると専門家が述べていました。

昨今、加速度的に増加するように見える治療人口。ようやく動き出した法制化の流れ。

一方、依然として耳にする「そんなにまでして子供が欲しいのか」、「エゴだ」、「自然にできないなら、諦めるべきだ」といった発言。
これらの考え方の違いは何故生じるのか?

それぞれの認識の隔たりに橋を架けたいと、北里大学の小林亜津子准教授が「生殖医療はヒトを幸せにするのか」という本の中で、不妊治療を受ける当事者と非当事者、あるいは批判的に見ている人たちの「温度差」を明らかにしています。

著書の紹介を兼ねたインタビュー記事をご紹介します。
      
不妊治療はワガママなのか 医療の進歩と当事者以外の「温度差」(抜粋)

ーー生殖医療に対して、生殖技術を利用し、子どもを持ちたいという当事者たちとそれ以外の人たちの間で温度差があると本書でも指摘されています。まず、生殖医療の特徴とは?

小林:生殖医療は、「医療」という名称がついていますが、不妊は病気ではなく、また生殖の障がいとなっている患部そのものを治すわけではありません。これは「子どもが欲しい」という希望を叶える「救済治療」と呼ばれます。近視の人たちがコンタクトレンズやメガネを装着するのも救済治療です。これに対し、患部そのものを治療することを「根治治療」と言います。

ですから、救済治療として医療の介入を受けること自体が不自然だと考える人もいますし、根治治療ではないため、「そこまでする必要が本当にあるのか」と、当事者以外からは「ワガママ」と考えられてしまいがちです。しかし、当事者からすれば確かに不妊は病気ではないけれど、「子どもが欲しい」と必死の思いで治療を受けているんです。

ーー根治治療でないが故に当事者でない人が抱く「違和感」もありますが、子どもができるかどうかは自然に任せたほうがいいという意見の人たちもいます。

小林:まず、不妊治療を良としない人たちは、自然の摂理に反するとか、不自然だからいけないといった直感的な物差しで判断しているのでしょう。昔から日本人は、新たな技術が出現し、その是非を考えるときに「自然」がキーワードになっていると海外からも指摘されています。直感的な物差しで判断する高齢者の中には、孫が体外受精で生まれたと聞くと毛嫌いする人もいると聞きます。これは試験管ベビーという言葉が、命そのものを人為的に生み出すというイメージがあるせいなのかもしれません。実際の体外受精はシャーレと呼ばれる培養皿に精子と卵子を入れ3日間放置し、その中で自然に受精卵が出来ると女性の子宮へ移植します。
(中略)

ーー生殖医療を受けたい当事者とそれ以外の人たちの温度差の他に、学会や法のガイドラインとの温度差もあるとのことですが、これを埋めるにはどうすればいいとお考えですか?

小林:審議するとき、不妊で悩む当事者の話を聞くのですが、当事者も自分の立場しか主張しないですし、聞いているメンバーも自分たちの立場しか主張しないというのが繰り返されているのが現状です。倫理学では、相手の置かれた状況に立ちどう考えるかというイマジネーションが重要なんです。でも、それがなかなかできないんですね。

ーー本書をどんな人に薦めたいですか?

小林:不妊治療をどうして受けるのかと考えている人に読んでほしいですね。当事者の気持ちや、置かれている状況、社会の状況、仕事と家庭の両立でどうしても子づくりを後回しにしなければいけない状況を知れば、一概に「ワガママ」などと言えないことがわかると思います。

繰り返しになりますが、この本では不妊治療を受ける当事者と非当事者、あるいは批判的に見ている人たちの「温度差」を明らかにし、それぞれの認識の隔たりに橋を架けたかったのです。

少しずつでも、理解を広げていくこと。私たちにも課せられている課題です。

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