精子受容障害とは、排卵や精子に問題はないが、精子が子宮の中に入っていけないというトラブルです。
原因には、子宮頸管のポリープ、外傷、狭窄(狭くなっている)、膣閉鎖、処女膜閉鎖などで物理的に精子が入っていけないという場合もあります。
また、性交の初めに疼痛があるために性交ができず、それで不妊ということもありますが、多く見られる原因のひとつは子宮頸管の粘液が十分に出ないという「頸管粘液分泌不全」です。

通常は、排卵期にむけてエストロゲンの値が上昇し始めるとおりものの量が増え、子宮頸管粘液は精子を受け入れるのによい条件を整えて始めます。
しかし、粘液の量が少なかったりその質に異常がある場合、精子が卵管まで進めずに不妊となります。

精子が届かない精子受容障害とは

原因としては、男性側または女性側にクラミジア感染があるために、夫婦のセックスによる相互感染による慢性の頸管炎がある場合や、子宮の卵胞ホルモンに対する感受性の低下がある場合などです。
感受性の低下が起こる原因としては、子宮の発育不全や骨盤内の血行不全等が考えられます。
その他、子宮頸部びらんや子宮頸がん等により子宮頸部をレーザーなどで取り除き、その後に粘液腺が働かなくなることがあります。

粘液不全は排卵期の頸管粘液、つまりおりものの変化に気をつけると、粘液不全かどうかある程度わかります。
排卵のころには外陰部が湿り気を帯び、おりものの量が増えると同時に卵白状の透明なおりものが外陰についていることが多いのです。
それを指にはさんで伸ばし糸を引くようなら、おりものの状態はよいでしょう。
こうした変化がまったくなかったり、この時期でもジェリー状のおりものしかない人は粘液分泌不全が考えられます。

では、どのような検査があるのでしょうか?

  1. 頸管粘液検査
    精子受容障害が考えられる場合、まずは頸管粘液を調べます。
    排卵のころの頸管粘液の量や性状の検査です。
  2. 性交後頸管粘液検査(フーナーテスト)
    基礎体温と頸管粘液の所見から推定した排卵日かその直前に、48時間禁欲をしたあとに性交し、性交後12時間以内に粘液の中に移行している精子を顕微鏡で観察します。
    粘液の中にいる精子の数と、運動性がある精子の有無などの検査を行い、この検査で数回良い成績が出れば、男性側にはまず問題はないといえます。
    また、よい性状の粘液があるのに、いつも精子が見えない、または運動精子が少ない場合は男性不妊の可能性があるため、精液検査を行います。
  3. ミューラー・クルツロック・テスト
    精子と粘液の1滴ずつをスライドの上に隣り合わせにおいて接触させ、人工的な状態で精子の粘液中への進入の様子を見るものです。
    この検査で精子の運動性が止まったり、精子が侵入できないと、精子免疫に問題があるとされます。

頸管の分泌不全の治療としては、卵胞ホルモン剤を排卵期前から投与し、頸管粘液の量を増やし状態を良くします。
また、卵胞ホルモンで頸管粘液を改善することができても、子宮内膜の感受性の低下があっては、着床が難しくなります。
ホルモン治療を行うにしても、運動をして健康的な生活を心がけ、血行を良くするなどの生活改善を行いましょう。