不妊はさまざまな妊娠過程での障害がからみあって起こります。
こうした障害を起こす病気として、以前は結核と淋病などの感染が問題になっていましたが、最近では結核はほとんどなくなりました。
しかし、結核に変わり最近ではクラミジア感染症が問題になっています。

クラミジア感染症とは、従来は目の結膜炎の原因菌であったクラミジア・トリコマチスという細菌に分類される微生物によって起こされる性感染症(STD:sexually transmitted disease)です。
感染経路としては、クラミジアに感染している人との性行為などにより粘膜に感染し、感染後数週間で発症します。

クラミジア感染症による不妊

女性ではまず頸管炎が起こり、現在では非淋菌性頸管炎の半数以上が、クラミジアによるものと言われています。
この頸管炎は、すこしおりものが増えるほかは、ほとんど症状の表れない無症候感染といわれています。
そのため、気づかずに放置しておくと、やがて子宮の内膜炎や筋層炎を起こして着床障害や流産の原因となったり、その後卵管炎を起こして卵管の通過障害や卵管水腫のもとになります。
また、骨盤腹膜炎を起こして、卵管周囲の癒着も起こします。
頸管炎の段階では無症状であったものが、このころになると突然の下腹通を起こしたりもしますが、症状の全くないことも多いようです。

男性でも淋菌感染のような排尿時の痛みはなく、尿道のかゆみや不快感程度の症状しかありません。
しかし、発展すると前立腺炎を起こしたり副睾丸炎などになることがあります。

研究が進むにつれ、今日の世界でもっとも多い性感染症といわれ、アメリカ合衆国では年間280万人がクラミジア感染症に感染していると推計されています。
卵管不妊の患者での陽性率は高く、60%ないし80%という報告まであります。
治療をせずに放置しておくと、子宮外妊娠の原因になるともいわれています。
また、分娩時の産道感染で新生児の結膜炎や肺炎が起こりやすいとされています。

クラミジア感染症の検査は、子宮頸部や尿道から分泌物を採取して検査する方法と、採血による方法があります。
また、最近ではインターネットなどで自宅で検査できる感染症検査キットが販売されているので、病院での検査に抵抗がある方も気軽に感染症の検査ができます。
不妊の方や妊婦の方は、必ずクラミジア感染の有無を調べることをお勧めします。
治療も抗生物質で可能ですが、一方の感染が治らないと性行為ですぐ相手にまた感染することから、ご夫妻またはパートナーと一緒に治療を受ける必要があります。
また、クラミジア感染の治療を受けた人は、治療から数か月後にもう一度クラミジア感染症の検査を受けて、感染が続いていないか確認したほうが安心です。