K.Nさん

タイでのドナー体験

私は卵子ドナーとして2014年2月20日から3月6日の約17日間タイのバンコクに滞在しました。
プログラム参加の動機は、身の回りに不妊で悩む知人がいたこと、そして健康で未婚である私が女性としての機能を活かして何か出来ないかと考えたことにより登録を決めました。
登録から何カ月も待つこともなく、程なくしてドナー候補としてのご連絡をいただき、勤務先の休みを調整し渡航いたしました。
滞在ホテルの周辺は、日本人や外国人が多く住む地域でした。駅前の百貨店では一通りの日用品や食料品が手に入りますし、また大型ショピングセンターなども電車で数分乗れば辿りつ けるような地域でした。
滞在2日目に最初の診察となり、現地スタッフである日本人の方がクリニックまで同行してくださいましたが、その方がとても面白い気さくな方で、毎回お会い出来るのがとても楽しか ったです。
クリニックはホテルから車で30分ほどの距離で、とても綺麗かつ落ち着いた雰囲気でホテルのラウンジのようでした。
最初に問診の後、採血、体重測定、血圧を測り、そこから診察まで毎回1時間程かかるので私は本を読んで過ごしました。
最初の診察で子宮内を内診してもらったところ、状態が芳しくないという結果を聞き、ドナーとして役割を果たせるか不安になりましたが、現地スタッフの方が、まだこれから処方する 注射により採卵出来る状態にまでなるので大丈夫、というお言葉を頂きました。
初診の後、別室にて自己注射の方法を看護士の方に指導して頂きながら射しました。
やはり初めての経験でしたので少し怖かったですが、針は想像以上に細く、それほど痛みはありませんでした。

それから毎日卵白を少なくとも3個食べること、水分を摂取しすぎないこと、栄養をとること、というアドバイスを頂き、滞在先のホテルでの朝食は毎日目玉焼きがメニューに含まれてい るので味を工夫しながら毎日続けました。

ホテルでの自己注射も1週間が過ぎると慣れ始めましたが、初期のころと違い少しずつ食欲が落ちる一方、注射の影響からかウエストがきつくなり始めました。
ただやはりドナーとしての役割は果たしたかったため、毎日ホテルの朝食会場に向かい、卵白3個を摂取するよう心がけました。
また、1食分栄養がきちんと摂れてなかったと感じた時には、1日の中でバランスよく摂取できるように駅前の百貨店でお惣菜を買ったりするなどして工夫しました。

日中は毎日外に出て過ごしました。
連日35度という暑さの中、注射による体のだるさも伴いとても疲れやすくなったように感じましたが、疲れたらカフェに入るなどして休憩を取りながら過ごすようにしました。
その際も、水分の摂りすぎなどには注意を心がけました。

3回ほど通院をして、卵巣の卵の成長具合から状態よく成長出来ていることが確認され、その2日後に手術が決まりました。
手術の36時間前きっかりに最後の注射を行い、手術8時間前から絶飲食が始まりました。手術は夕方5時からでしたので、その日は体のことを第一に考えて時間までホテルの部屋で過ごし ました。

手術前、服を着替え手術台に寝転んだ時にとうとうこの瞬間が来るのだなとどきどきしました。
全身麻酔自体が初めての経験でしたが、タイ人の看護士の方々が日本語で励ましてくださいましたのでそれほど恐怖感はありませんでした。顔の前に麻酔と思われるマスクで何度か呼吸 した後、すぐに眠りに落ちたようで記憶にはありません。

麻酔自体は3~40分効いていたのでしょうか。目が覚めると、正に子宮の部分がいたーーーい!!という痛みがありました。
隣では、現地スタッフの方が「終わったよ、卵40個も取れたよ。よく頑張ったね。」と眠りから覚めるのを待って下さっていました。ベッドの前のテーブルには、クリニックからの差し入れで温かいココアとサンドイッチが準備されていました。
ココアだけを飲み干し、痛みが少しひいたのち、クリニックを後にしました。朝から何も食べておらず空腹だったため、更に帰りに、何度かクリニックとホテルの往復で車に同乗させ て頂いた他のドナーさんと一緒に大きめのサンドイッチを購入し、ほっとしながらそれを食べました。

痛みはそれから数日続き、最初のうちは少しの段差や階段の昇降まで痛みにひびきましたが、手術の2日後の帰国のためのフライトにも影響なく、更に手術の4日後の勤務先の通常業務 (オフィスワークではなく体をかなり動かす仕事です)も問題なく過ごせました。
卵白の摂取は暫く続けるのがベターというアドバイスを頂いていたので、出来る限りアドバイスの指示を継続しました。また、体調が手術後10日程は元通りにはならなかったのですが、メールにて何度か帰国後もご相談させて頂き、そのたびにアドバイスを頂きました。
手術後2週間もすると、体型や体調も元通りになり、通常より3日程早いぐらいのタイミングで生理がきました。

手術が終わり麻酔から覚めた瞬間、「あ、終わったんだ」という安心感が生まれたのをよく覚えています。
2週間ほどの滞在で、やはり私自身も少しの体調の変化はありましたが、子供を持つためにドナーを求めておられるご夫婦は、この体験よりずっと長く苦しい思いをされてきたのだと思うと、私のこのドナーとしての役割が少しでもご夫婦に、子供を持つための大きな手助けとなってくれれば私も嬉しいと感じました。

今回このエッグドナーという貴重な機会を提供して頂いたメディブリッジさんと私を選んで頂いたご夫婦に、有難う御座いましたと感謝をお伝えしたいです。