着床不全の原因|胚と母体、それぞれに潜む見逃せないポイントとは?
体外受精で良好な胚を移植しても、なかなか妊娠に至らない状況が続くと「何がいけないのだろう」と自分を責めてしまう方も少なくありません。しかし、着床が成立しない背景には、胚そのものの質だけでなく、母体側の環境にもさまざまな要因が関わっています。本記事では、着床不全の原因を「胚側の要因」と「母体側の要因」に分けて、それぞれに対して行われる代表的な検査や治療のアプローチについて解説します。併せて、子宮筋腫や慢性子宮内膜炎、子宮内フローラの乱れ、着床の窓のずれなど、見落とされがちな母体側のポイントについても解説します。「なぜうまくいかないのか」を客観的に整理し、次のステップへ踏み出すための手がかりを、一緒に見つけていきましょう。
【目次】
■着床不全の原因は主に「胚」と「母体」に分かれる
・胚の染色体異常が原因となるケース
・子宮の器質的異常による影響
■子宮内環境の異常が着床を妨げることも
・慢性子宮内膜炎の可能性
・子宮内フローラの乱れが妊娠率に影響
・子宮内膜が薄いことによる影響
■「着床の窓」のずれが見落とされがちな要因に
・ERA検査で着床のベストタイミングを特定
■免疫のバランスが着床を左右することも
・Th1/Th2のバランスが崩れると着床困難に
・ビタミンDの不足も免疫バランスに影響
■着床不全の原因を知ることが妊娠への近道
■今後のためにも知っておきたい卵子提供
着床不全の原因は主に「胚」と「母体」に分かれる
着床不全の背景には大きく分けて、「胚側の要因」と「母体側の要因」が存在します。胚に問題がある場合は、受精卵自体の染色体異常などが原因となることが多く、残念ながら治療によって直接改善することはできません。そのため、治療の中心は胚の選別や着床率の高い胚を見極めることに重点が置かれます。
一方で、母体側の問題は検査や治療によって改善できる可能性があります。子宮内膜の環境やホルモンバランス、子宮内フローラの状態などを評価し、必要に応じて手術や薬物療法、生活習慣の調整などで着床しやすい状態を整えることができます。つまり、着床不全の原因を「胚」と「母体」に分けて整理することで、自分に必要なアプローチが見えてきます。次のステップを考える際には、どちらの側面に焦点を当てるべきかを理解しておくことが重要です。
胚の染色体異常が原因となるケース
見た目には良好な胚でも、染色体の数に異常がある場合、着床が難しくなることがあります。また、着床に成功しても、異常な染色体を持つ胚は妊娠の継続が難しいケースがあるため、妊娠成立や維持の観点からも注意が必要です。こうした染色体異常の有無は、胚移植前に行う染色体検査(PGT-A)によって確認することが可能です。
PGT-Aは不育症や反復着床不全に悩む方を対象に実施されることが多く、検査によって染色体が正常な胚を優先的に選んで移植する方針が取られます。このように、胚の染色体状態を事前に把握することで、着床率や妊娠継続率を高めるための治療計画を立てやすくなります。
子宮の器質的異常による影響
子宮の形や構造に異常がある場合、胚の着床に影響することがあります。例えば、子宮内膜に突出する粘膜下筋腫や腺筋症は、胚の着床を物理的に阻害することがあり、特に子宮腺筋症では改善が難しい場合があります。また、子宮ポリープも着床を妨げる可能性があるため、発見された場合は場所に関わらず手術で除去が推奨されます。さらに、中隔子宮など子宮の形態異常があると、着床に適したスペースが限られてしまうことがあります。
こうした器質的な異常は、子宮鏡検査や超音波検査によって確認が可能で、必要に応じて手術での改善が検討されます。手術によって着床環境が整うケースも多く、器質的異常に対しては、手術が有効な治療の選択肢の一つとなります。
子宮内環境の異常が着床を妨げることも
着床は、胚の状態が良好であっても、子宮側の受け入れ環境が整っていなければ成立しにくいことがあります。子宮内では、炎症や菌のバランス、内膜の厚さといった要素が微妙に影響し合い、どれか一つが崩れるだけでも着床を妨げる要因になり得ます。ここでは、着床不全の背景に潜む子宮内環境の異常について、その代表的な原因と治療改善の方向性を見ていきましょう。
慢性子宮内膜炎の可能性
慢性子宮内膜炎は、自覚症状がほとんどないことが多く、気づかないうちに着床の妨げとなっている場合があります。子宮内膜に慢性的な炎症があると、受精卵がうまく着床しづらくなり、繰り返す流産や不妊の原因になると考えられています。原因の多くは細菌感染であり、診断には子宮鏡検査やCD138という染色方法を用いた組織検査が行われます。治療は抗生物質の内服が中心となり、炎症を改善することで着床しやすい子宮環境を整えることを目指します。
子宮内フローラの乱れが妊娠率に影響
子宮内にも細菌(常在菌)が存在しており、そのバランスが胚の着床や妊娠に関係していることがわかってきています。特に善玉菌の割合が少ないと悪玉菌が増えて炎症が起きやすくなり、着床しづらい環境になることがあります。子宮内の菌の種類や割合は、EMMAやALICEといった検査で詳しく調べることが可能です。必要に応じて、プロバイオティクス(乳酸菌など)の補充や抗菌薬の使用で菌のバランスを整える治療が行われ、着床環境の改善を目指すことができます。
子宮内膜が薄いことによる影響
子宮内膜は胚が着床するための土台のような役割を果たします。つまり、内膜が一定の厚さに達していない場合、胚が着床しにくくなる傾向があり、一般的には7mm未満だと注意が必要とされています。内膜の厚さを改善するためには、ホルモン補充療法や血流改善を目的とした薬剤の使用が検討されることがあります。また、栄養状態の改善や生活習慣の見直しも、内膜の質を整えるうえで役立つことがあります。こうした多角的なアプローチによって、着床しやすい子宮環境を整えることが可能です。
「着床の窓」のずれが見落とされがちな要因に
胚の着床には、胚の質だけでなく移植のタイミングも非常に重要です。通常、排卵後5~7日目の子宮内膜が最も胚を受け入れやすい状態になるとされています。しかしこのタイミングは人によって前後することがあり、最適な時期からずれてしまうことがあります。この現象は「着床の窓のずれ」と呼ばれ、見落とされがちな着床不全の原因の一つです。
ERA検査で着床のベストタイミングを特定
ERA検査では子宮内膜の細胞から遺伝子情報を解析し、胚が着床しやすい最適なタイミングを特定することができます。検査の結果から、着床に適した日が通常より早いのか遅いのかがわかり、その情報に合わせて移植日を調整することで、着床しやすいタイミングを狙うことが可能です。ただし、慢性子宮内膜炎が存在する場合は、正確な解析結果が得られないことがあります。そのため、必要に応じて先に炎症の治療を行い、着床環境を整えてからERA検査を実施することが推奨されます。
免疫のバランスが着床を左右することも
着床には母体の免疫バランスも重要な役割を果たすとされます。免疫が過剰に働くと、受精卵を「体外からの異物」として攻撃してしまい、着床しにくくなることがあります。特に、自己免疫や同種免疫の異常が、着床不全に関与していると考えられています。
Th1/Th2のバランスが崩れると着床困難に
妊娠の成立には、免疫のバランスが重要です。Th1細胞は体内に侵入した異物を排除する役割を持ち、Th2細胞は妊娠維持に関わるとされます。ところがこのTh1/Th2のバランスが崩れてしまいTh1が過剰になると、受精卵を異物として攻撃してしまうリスクがあります。もちろんそのような状況では、着床が困難になります。血液検査でTh1/Th2の比率を確認することが可能であり、必要に応じてタクロリムスなどの免疫抑制薬による治療でバランスを整えるアプローチがとられることもあります。
ビタミンDの不足も免疫バランスに影響
ビタミンDは、免疫寛容に関わる「制御性T細胞」を増やす働きがあり、妊娠維持に重要な役割を果たします。不足しているとTh1が優位になりやすく、受精卵を異物として排除しやすくなるため、着床しづらくなることがあります。ビタミンDは、食事や日光浴、サプリメントで補うことが可能です。血液検査で血中濃度を測定し、不足が認められる場合には適切な補充が推奨されます。こうした調整によって、免疫バランスを整え、着床しやすい環境づくりに役立てることができます。
着床不全の原因を知ることが妊娠への近道
着床不全の原因は一つではなく、胚側・母体側のさまざまな要因が絡み合っています。そのため、一つ一つの原因を丁寧に見極め、段階的に対処していくことが大切です。たとえ「着床不全」と診断されても、改善できる可能性のある原因が見つかることもあります。検査や治療の順序を医師と一緒に整理することで、安心して次のステップに進むことができます。また、どの検査をいつ行うかは人によって異なるため、自分の状況に合った方法を選ぶことが、着床を成功させるうえで大切です。
今後のためにも知っておきたい卵子提供
自分の卵子での妊娠が難しい場合、第三者から提供された卵子を使って妊娠を目指すという選択肢もあります。国内では卵子提供の機会や数が限られているため、治療を受けられる医療機関や受け入れ体制を事前に確認しておくことが大切です。また、卵子提供は医療的な判断だけでなく精神的・家族的な側面も関わるため、医師と十分に相談し、家族との話し合いも重要です。こうした準備を通じて、自分に合った方法で前向きに次のステップを考えることができます。
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