体外受精の妊娠判定が陰性だったときに…次に向けて考える原因と再挑戦の選択肢
体外受精に挑戦したものの妊娠判定が陰性だった場合、その結果に気持ちが追いつかず、立ち止まってしまうこともあるかもしれません。しかしこの結果は失敗ではなく、次につなげる大切なステップでもあります。本記事では、妊娠に至らなかった背景にどのような原因が考えられるのかを分かりやすく解説し、再挑戦に向けての選択肢や前向きな心の整え方についてもお伝えします。ご自身のペースで、次の一歩を一緒に考えていきましょう。
【目次】
■なぜ妊娠しなかったのか?考えられる原因とは?
・胚(受精卵)の質に問題があった可能性
・子宮内膜の状態と着床の相性
・ホルモンバランスの不調が影響するケース
・免疫や炎症など特殊な要因
・年齢や生活習慣の影響も無視できない
■次に向けてできること・考えるべきこと
・次周期での再挑戦が可能な条件
・採卵からやり直すかどうかの判断ポイント
・新たな検査や治療方針の見直し
・再挑戦の選択肢のひとつとして「卵子提供」を知っておこう
・心の準備とパートナーとの共有も大切に
なぜ妊娠しなかったのか?考えられる原因とは?
体外受精では、胚移植から7~10日後を目安に血液検査でhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンの値を測定し、妊娠の成立を判定します。検査でhCGの数値が基準に満たない場合、「妊娠していない(陰性)」と判断されます。
妊娠に至らなかった場合、多くの人が「なぜこうなってしまったのか」と考えるものですが、その原因はひとつではありません。いくつかの要因が複雑に関係していることも考えられます。妊娠の成立は非常に繊細なプロセスであり、複数の要素がかみ合ってはじめて実現します。ここでは、妊娠判定が陰性だったときに考えられる代表的な原因を整理していきます。
胚(受精卵)の質に問題があった可能性
体外受精では、受精卵が無事にできても、その後の細胞分裂が順調に進まなければ、着床や発育にはつながりにくいとされています。例えば、受精後に細胞の形が不均等であったり、細胞の断片(フラグメント)が多く見られたりする場合は、胚の発育能力が低下する可能性や、妊娠に至る確率も下がる可能性があります。
また、見た目に問題がなくても、染色体の数に異常がある胚では着床できない、あるいは着床してもごく初期の段階で成長が止まってしまうことがあります。こうした染色体の異常は、女性の年齢に比例して増える傾向がありますが、若い方でも起こりうるため、一概に年齢だけでは説明できません。
胚の「グレード」と呼ばれる評価は、主に形や分裂の状態など見た目の基準に基づいて行われます。確かにグレードの高い胚ほど妊娠の可能性は高まる傾向にありますが、「グレードが高い=必ず妊娠できる」というわけではありません。逆に、見た目が少し劣っていても妊娠につながることもあります。さらに、染色体に異常がある場合、どれほど見た目が整っていても着床しないことがあるため、外見だけで胚の「質」のすべてを判断することは困難です。
重要なのは、胚の質が原因だったとしても、それを一度の結果から正確に特定することは非常に難しいという点です。今回妊娠に至らなかったのは「偶然悪いタイミングが重なっただけ」ということも考えられます。そのため、自分を責めすぎず、次に向けてどう進むかを医師とともに前向きに考えていくことが大切です。
子宮内膜の状態と着床の相性
体外受精で妊娠が成立するためには、受精卵(胚)の質だけでなく、子宮内膜の状態が着床に適しているかどうかも重要な要素となります。子宮内膜の厚さは着床に影響する重要な要素のひとつです。一般的に、子宮内膜が7mm未満の場合、着床しにくい傾向があるとされ、できれば8mm以上の厚さが望ましいとされています。厚さが基準を満たしていれば「着床可能」として移植が行われることが多く、それ以上の詳細な評価が行われないケースも少なくありません。
しかし、内膜の厚さだけでは不十分なこともあります。例えば、子宮内膜の表面が均一でなかったり、子宮内の血流が不十分であったりする場合、胚がうまく着床できず、妊娠に至らないことがあります。血流が良好であることは、受精卵が栄養を受け取りやすくするためにも重要です。
さらに「着床の窓(ウィンドウ・オブ・インプランテーション)」と呼ばれる、子宮が胚を受け入れるタイミングも非常に重要です。この時期と胚の到着がずれてしまうと、いくら良好な胚を戻しても、子宮が受け入れ態勢にないために着床が成立しないことがあります。移植のタイミングはホルモンの状態に基づいて調整されますが、個人差があるため、必要に応じてERA検査(子宮内膜受容能検査)などの追加評価が検討されることもあります。
このように、子宮内膜の厚さが一定の目安になるとはいえ、厚さだけで着床環境のすべてを評価することはできません。必要に応じて、血流やタイミングの再検討を行うことで、次の移植での妊娠の可能性を高められることもあります。
ホルモンバランスの不調が影響するケース
妊娠の成立には、卵子や子宮の状態だけでなく、ホルモンバランスが適切に保たれていることも必要です。特に、黄体ホルモン(プロゲステロン)は着床の成立と妊娠の維持において重要な役割を果たします。体外受精では、排卵誘発やホルモン補充などで体のサイクルをコントロールしているため、本来の体のリズムと異なるタイミングでホルモンが分泌されることがあります。黄体ホルモンの分泌が十分でないと、子宮内膜がしっかりと成熟せず、胚を受け入れる準備が整わない可能性があります。
また、排卵やホルモン補充は前出の「着床の窓(ウィンドウ・オブ・インプランテーション)」と深く関連しており、胚移植のタイミングが合っていない場合、受精卵が到着したときには、すでに子宮内膜が受け入れ態勢を終えてしまっていることも考えられます。移植した胚の質がどれほど良くても、ホルモンのリズムがずれていれば、着床のチャンスを逃してしまう可能性があります。
ホルモン補充が途中で中断されたり、補充量が不十分だったりした場合には、着床後に妊娠が継続できず、初期流産につながるケースもあります。これは「着床障害」や「不育症」として扱われることもあり、繰り返す場合には専門的な検査や治療が必要になることもあります。一方で、「黄体ホルモンが足りないなら補えばいい」と考える人もいますが、実際には個人ごとに必要な量や投与タイミングが異なるため、単純な対応では十分な効果が得られないことも少なくありません。
ホルモンバランスは見えにくく、コントロールの難しい部分でもありますが、調整によって状況が大きく改善する可能性もあります。医師とよく相談しながら、最適なサポートを受けることが大切です。
免疫や炎症など特殊な要因
体外受精で思うような結果が得られないとき、免疫や炎症といった見えにくい要因が関わっていることもあります。本来、妊娠は自分ではない細胞(受精卵)を体内で受け入れる、非常に特殊なプロセスです。そのため、免疫の働きが過剰になると、受精卵を異物とみなして攻撃してしまう可能性が指摘されています。
また、子宮内膜に慢性的な炎症(子宮内膜炎)があると、受精卵が着床しにくくなることが知られています。このような炎症は自覚症状がないことも多く、検査をしなければ見つからないケースも少なくありません。さらに、子宮内の感染症や細菌のバランスの乱れ(腟内フローラの異常)も内膜の環境に影響し、着床の妨げになることがあります。特定の細菌が優勢になることで、炎症を起こしたり内膜の成熟を妨げたりすることもあるため、繰り返し着床に至らない場合には、子宮内の感染や免疫の状態を評価する検査が提案されることがあります。
こうした要因は一般的な検査では分かりにくく、見えない原因としてそのまま経過観察になる可能性もあります。しかし、適切な検査や治療によって改善が期待できる場合があります。今後の治療方針を決めるうえで、医師と十分に相談しながら、これらの検査の必要性について話し合うことが大切です。
年齢や生活習慣の影響も無視できない
体外受精の結果に影響を与える要因として、年齢や日々の生活習慣も重要な要素です。特に35歳を過ぎる頃から、卵子の質が徐々に低下しやすくなることが知られています。これは自然な加齢のプロセスの一部であり、誰にでも起こることです。卵子の老化が進むと染色体の異常が起こりやすくなったり、受精後の細胞分裂がスムーズに進まなかったりする可能性が高まります。その結果、着床率が低下したり、着床しても成長が途中で止まってしまったりするケースもあります。
また、生活習慣の乱れもホルモンバランスや卵子の質に影響を与える要因となります。例えば、慢性的な睡眠不足や強いストレスは、脳からのホルモン分泌に影響を及ぼし、排卵や子宮内膜の成熟に支障が出ることがあります。栄養が偏った食生活や、過度の飲酒・喫煙は、体の代謝や血流、ホルモンの働きを妨げることがあり、妊娠しやすい体づくりの大きな障害となります。
もちろん、生活習慣を完全にコントロールすることは困難ですが、できる範囲で体に優しい選択を積み重ねていくことが、次のステップへの土台となることもあります。焦る気持ちを抱えながらの妊活はとても大変ですが、自分の体と丁寧に向き合うことが、長い目で見ると実を結ぶこともあるでしょう。各要因がどの程度影響しているかは個々に異なるため、医師とよく相談し、自分にとって何が考えられるのかを整理することが大切です。
次に向けてできること・考えるべきこと
妊娠判定が陰性だったとき、失望や戸惑いの気持ちは当然のものです。時には一度立ち止まり、このまま治療を続けるのかどうかを含め、ご自分に休息と労わりの時間を作っても良いでしょう。一方で諦められない気持ちがあるのであれば「次にできることは何か」を考えることは、次の一歩につながると同時にご自身が力を取り戻すきっかけになります。再挑戦に向けては医学的な見直しだけでなく、心の整理やパートナーとの対話も大切なプロセスです。今後の治療の方向性を冷静に検討し、自分たちにとって納得できる選択をするために、できること・考えるべきことを一つひとつ整理していきましょう。
次周期での再挑戦が可能な条件
妊娠判定が陰性と判明した時点で凍結している受精卵(胚)が残っている場合は、採卵をやり直さずに移植のみを行えるため、比較的早い段階で再挑戦に進める可能性があります。
ただし、すぐに次の移植に進めるかどうかは、いくつかの条件によって判断されます。まず重要なのは、子宮内膜の厚みやホルモンの値が適切な状態に戻っているかどうかです。陰性と判明した後の生理後、移植の為に厚くなっていた内膜は、一旦きれいに剥がれ落ちている必要があります。また例えば、hcgというホルモンは移植時に使用することもあれば、わずかでも妊娠の兆候があれば上がる事があります。その値が十分に下がっていること(一般的には0.1以下)が確認されれば、ホルモン補充周期に入ることが可能と判断される事が多いです。その後のホルモン補充等にて子宮内膜の厚みが一定以上あり、内膜の状態が良好であることも、再移植の可否を左右する大きな要素です。これらの状態は、超音波検査や血液検査によって医師が総合的に判断します。
大切なのは、自分の感覚だけで判断せず、医師の診察を受けて再挑戦のタイミングを見極めることです。体への負担を最小限にし、より良い条件で移植に臨むためにも、焦らずに適切な判断を仰ぐことが結果的に妊娠への近道になることがあります。
採卵からやり直すかどうかの判断ポイント
妊娠判定が陰性だった場合、次に進むにあたってまず確認されるのが、凍結胚(凍結保存している受精卵)が残っているかどうかです。もし凍結胚が残っていれば、そのまま移植に進める可能性がありますが、胚が残っていない、あるいは前回の胚の質があまり良くなかった場合には、再度採卵を行うことが検討されます。
採卵できた卵子の数が少なかったり、受精率が低かったりした場合にも、体の状態や治療方針を見直したうえで、別のアプローチを取ることがあります。例えば、排卵誘発の方法(刺激法)を変更したり、採卵のタイミングや薬剤を調整したりすることで、より質の良い卵子を得られる可能性があります。
さらに、移植周期中に卵胞の発育が良い場合には、そのチャンスを逃さずに採卵だけを先に行い、良質な卵子を凍結保存(いわゆる「貯卵」)しておくという選択肢もあります。この方法を取っておけば、後日子宮内膜の状態が整った時点で、より良い胚を使って万全な状態で移植に臨めます。採卵のやり直しを含む治療の方針については、医師と相談しながら、これまでの経過と次に目指す方向性をすり合わせたうえで決めていくことが大切です。
新たな検査や治療方針の見直し
妊娠判定が陰性だったとき、「何か見落とされている原因があるのでは」と感じる方もおられるかもしれません。治療を重ねてもなかなか結果に結びつかない場合には、新たな検査を取り入れる、あるいは治療方針を見直すことが成功の良いきっかけとなる事があります。例えば、ERA検査(子宮内膜着床能検査)では、胚が着床しやすい「子宮内膜の最適なタイミング(着床の窓)」を詳細に調べられます。通常の移植タイミングとわずかにずれているだけでも、胚がうまく着床しない可能性があるため、ERA検査によって移植日を調整することで妊娠率が向上するケースもあります。
また、子宮内の微小環境を調べるための検査(EMMA検査・ALICE検査)も重要な手がかりとなります。
検査名 | 調べる内容 |
EMMA(エマ)検査 | 子宮内に良い菌(ラクトバチルス属)が十分に存在しているかどうか |
ALICE(アリス)検査 | 子宮内膜に慢性的な炎症を引き起こす細菌が存在していないか |
これらはERAと同じ研究機関によって提供されており、3つの検査(ERA・EMMA・ALICE)をまとめて実施することも多く、見た目では分からない「着床の質」や「環境」を評価するのに役立ちます。
加えて、免疫の働きやホルモンバランスに関する再検査を行い、必要に応じて治療計画を微調整する選択もあります。特に黄体ホルモンの補充や免疫調整の治療が有効なケースもあり、個別化医療がより重要となってきています。これらの検査は保険適用外のことも多く、費用も含めて慎重に検討が必要ですが、「なぜ着床しなかったのか」をもう一歩深く理解するための貴重な手がかりとなります。
再挑戦の選択肢のひとつとして「卵子提供」を知っておこう
体外受精を何度か繰り返しても妊娠に至らない場合、選択肢のひとつとして「卵子提供」という方法があります。これは、自分の卵子を用いるのではなく、若く健康なドナーから提供された卵子を使って受精・胚移植を行う治療です。特に、年齢の影響などで自身の卵子の質が大きく低下していると考えられる場合、卵子提供を受けることで、妊娠や出産の可能性が大きく高まることがあります。何度も採卵や移植を繰り返しても良好な胚が得られず、結果につながらないケースでは、ひとつの現実的な選択肢となり得ます。
ただし、日本国内では卵子提供を受けられる医療機関や制度はまだ限られており、実際には海外(アメリカの一部の州や台湾など)で合法的に治療を受ける方も少なくありません。その一方で、卵子提供には医学的なことだけでなく、倫理的・法的・心理的・経済的な課題が伴うため、簡単に決断できるものではありません。治療を希望する場合には、担当医だけでなく、卵子提供に詳しい専門のカウンセラーなどとも十分に相談し、自分とパートナーにとって何が最も納得できる道かをじっくりと検討することが大切です。
卵子提供はメディブリッジにご相談ください
私たちメディブリッジは、日本最大の卵子提供・代理出産のエージェンシーです。日本東京オフィスを中心とした、アジア各国やハワイ・マレーシア・台湾の医療施設との提携と、充実したサポート体制により、これまで既に1000組を超えるご夫妻のお子様を授かるためのお手伝いをして参りました。
実績と成功率・価格・信頼性・利便性において最適な卵子提供プログラムをご提供することができると考えています。ぜひお気軽にご相談ください。
心の準備とパートナーとの共有も大切に
体外受精の結果が陰性だったとき、次の治療に進む前に、まずはこれまでの治療の過程で感じたことや今後の希望や不安などを夫婦で率直に話し合う時間を持つことがとても重要です。お互いの気持ちを共有することで、理解と支え合いの基盤が築かれ、次のステップへ進む心の準備が整いやすくなります。
妊娠判定が陰性となったときに感じる悲しみや失望感は、決して異常なことではなく自然な感情です。無理にそれらの感情を抑え込もうとせず、十分に自分自身の気持ちと向き合い、整理する時間を持つことが必要です。もし、つらい気持ちを一人で抱えきれない、または夫婦間でのコミュニケーションが難しいと感じる場合は、専門のカウンセラーに相談することも有効な選択肢です。一人で抱えずに話せる場があることで、気持ちに少しずつ余裕が生まれ、心の整理や良好な夫婦関係にもつながっていくでしょう。