代理出産をするための条件とは|日本と海外の制度・手続きの違い
子宮の疾患や先天的に子宮がない方など、医学的な理由で妊娠が難しい方々にとって、代理出産は選択肢の一つとして検討されることがあります。しかし、代理出産には法律的・倫理的な課題も多く、実施の可否や条件は国や地域によって大きく異なります。本記事では、代理出産の基本的な条件、代理出産が可能な国々、必要な手続き、そして注意すべき点について紹介します。代理出産を検討する際の参考情報として、ぜひお役立てください。
【目次】
■代理出産を受けるための基本条件
・医学的な理由で妊娠・出産ができないこと
・結婚していること
・経済的に安定していること
■代理母に求められる条件
・健康な成人女性であること(一般的には20〜40歳)
・ 少なくとも1人以上の健康な子供を自然分娩で出産した経験がある
・ 妊娠・出産の履歴に問題がない(流産や早産のリスクが低い)
・ 精神的・経済的に安定している
・ 禁煙・禁酒・薬物使用歴がない
・ 代理出産を実施する国の市民権や永住権を持っている
■代理出産が認められている国とその条件
・アメリカ
・ギリシャ
・カザフスタン
・ウクライナ
・ジョージア
・ロシア
■代理出産の流れ
・1. 代理出産プログラムの相談・契約
・2. 代理母の選定
・3. 体外受精(IVF)と胚移植
・4. 妊娠確認と経過観察
・5. 出産と法的手続き
■代理出産を考える際の注意点
・倫理的・心理的な問題
・法律的なリスク
・信頼できるエージェントを選ぶ
■代理出産の条件を理解し、慎重に判断を
代理出産を受けるための基本条件
代理出産は誰でも受けられるものではありません。代理出産を希望する夫婦が満たすべき条件には、以下のようなものがあります。
・医学的な理由で妊娠・出産ができないこと
・結婚していること
・経済的に安定していること
・依頼者と代理母双方の合意が取れていること
ひとつずつ解説をしていきます。
医学的な理由で妊娠・出産ができないこと
代理出産は、依頼者自身が医学的な理由で妊娠や出産が不可能、または困難な場合に検討される選択肢です。該当する理由として、以下の8つが挙げられます。
・子宮癌などで子宮を摘出した
・中隔子宮・重複子宮・単角子宮・双角子宮等が著しく、手術での改善が期待できない
・先天的に子宮がない(ロキタンスキー症候群など)
・重度の子宮筋腫
・重度の子宮腺筋症
・ホルモン補充をしても子宮内膜が厚くならない
・何らかの理由による子宮内癒着
・本人による妊娠継続や分娩が医学上危険であると診断された
なお、依頼者の卵子が使用できない場合、あるいは摘出されている場合は、他の提供者から卵子の提供を受けて代理出産を行うことがあります(ドナー卵子による代理出産)。
結婚していること
代理出産が可能な国・医療機関では、依頼者が法的に結婚していることが一般的な条件とされています。これは、生まれてくる子供の教育や安定した家庭環境を確保するために必要と考えられているためです。一部の国や地域では、未婚のカップルや単身者、同性カップルにも代理出産へのアクセスを認めていますが、事実婚や未婚のカップル、同性カップルに対する対応は、国や地域によって異なるため、必ず事前に詳細を確認しましょう。
経済的に安定していること
代理出産には、プログラム費用、医療費、代理母への報酬、法的手続きに必要な費用など、さまざまな経済的負担が伴います。そのため、法的な条件ではないものの、依頼者が経済的に安定していることは重要なポイントです。子供を育てる上での生活環境や教育環境の質にも関わってくるため、慎重に検討する必要があります。
依頼者と代理母双方の合意が取れていること
日本の法制度では、依頼者夫婦と代理母が合意しない場合、代理出産によって生まれた子供の国籍問題が発生する可能性もあります。そのため、夫妻が納得し、十分に話し合いを重ねた上で代理出産を実施することが重要です。
代理母に求められる条件
代理母に求められる条件として、以下の6つが挙げられます。
・ 健康な成人女性であること(一般的には20〜40歳)
・ 少なくとも1人以上の健康な子供を自然分娩で出産した経験がある
・ 妊娠・出産の履歴に問題がない(流産や早産のリスクが低い)
・ 精神的・経済的に安定している
・ 禁煙・禁酒・薬物使用歴がない
・ 代理出産を実施する国の市民権や永住権を持っている
これらの条件は、代理母として妊娠・出産を安全に行うために必要な基準です。最終的には、医師による健康診断や検査を通じて、代理母としての適性が確認されます。
また注意点として、日本の患者が代理出産を希望する場合、代理母が未婚であることが条件となります。婚姻状態にある代理母の場合、戸籍法に基づき、代理母自身の配偶者の子供と見なされる可能性があるためです。
代理出産が認められている国とその条件
日本では代理出産は法律で認められていないため、海外での実施が前提となります。各国の条件を把握し、自分たちに適した国を選ぶことが重要です。ここでは、代理出産が認められている国々とその条件について簡単に解説します。
アメリカ
アメリカでは、代理出産に関する法律は州ごとに大きく異なっています。カリフォルニア州のように、有償・無償問わず積極的に認めている州もあれば、反対に厳しく禁止している州も存在します。また、子どもの出生前から法律上の親子関係を認める「出生前命令」の制度がある州もあり、どの州で実施するかで法的な手続きや注意点が変わります。各州の制度を詳しく調べて検討することが必要です。
ギリシャ
ギリシャでは、裁判所の許可を取得すれば代理出産を行うことができます。対象となるのは異性カップルまたは独身女性のみです。子どもが誕生した瞬間から、依頼した親が法的な親とみなされ、代理母には親としての権利は一切ありません。ただし、代理母へ報酬を支払うことは法律で禁止されており、医療費や生活に必要な経費の補償だけが許可されています。年齢制限や医学的証明の提出義務など、条件が厳格であることも特徴です。
カザフスタン
カザフスタンでは妊娠代理出産が法律で認められており、基本的には異性カップルが対象となります。しかし、商業的な代理出産が正式に認められているかについては法律上不明瞭な点もあるため、注意が必要です。また、代理母への報酬や生活費は他国に比べて高額とされています。子どもが生まれるとすぐに依頼した親が正式な親として登録されますが、国際的な利用を考えている場合は、必ず現地の最新情報を確認するようにしてください。
ウクライナ
ウクライナでは商業的な代理出産が明確に合法化されています。利用できるのは既婚の異性愛カップル。子どもの法的な親子関係は受精した時点で確定し、代理母には親としての権利がありません。近年は戦争による影響もあり、安全性や現地への渡航リスクには特別な配慮が必要ですが、費用が比較的安く、制度も明確なため、多くの国からの依頼が続いています。
ジョージア
ジョージアでは1997年以降、代理出産が合法的に行われており、主に異性カップル向けの制度となっています。ただ、外国人による利用を制限する法改正の動きが見られるなど、法律の変化が頻繁に起こっています。子どもが誕生するとすぐに依頼した親が法的に親となり、代理母は親権を持ちません。商業的契約が認められていますが、今後の法的な変更の可能性を十分に考慮する必要があります。
ロシア
ロシアは長年にわたり商業的な代理出産を認めてきましたが、最近の法改正によって外国人の利用は禁止されました。現在は婚姻中のロシア国民または独身女性のみが代理出産を利用できます。代理母への報酬に上限はなく、生まれた子どもは出生と同時に依頼した親が法的親として認められます。ただし、こうした制限により、海外からの依頼が難しくなっており、国際的な利用は現状では困難な状況です。
代理出産の流れ
代理出産を希望する場合、代理母の選定や法律的・医療的な確認、契約の締結など、さまざまな手続きが関わります。ここでは、代理出産を実施する際の流れを解説します。
1. 代理出産プログラムの相談・契約
代理出産を扱うエージェンシーやクリニックに相談し、費用や条件、サポート内容などを確認します。
内容に合意し契約を結ぶと、正式な手続きが始まります。
2. 代理母の選定
代理母となる方の健康状態や生活環境などを確認したうえで、マッチングを行います。ただし、依頼者側が拒否することはできても、自由に選択できるわけではない点に注意が必要です。
3. 体外受精(IVF)と胚移植
依頼者の卵子と精子を用いて受精卵を作成し、代理母の子宮に移植します。着床前診断(PGT-A)を行うことで染色体異常の有無を事前に確認し、成功率を高める場合もあります。なお、日本では受精卵を海外へ移送して行うこともあり、最終契約を結ぶ前に体外受精を進めるケースもあるため、実施時期や方法はあらかじめ確認しておくことが大切です。
4. 妊娠確認と経過観察
妊娠が確認されたあとは、定期的な健康チェックや検査を実施し、胎児の状態を慎重に見守ります。依頼者は必要に応じて代理母とコミュニケーションをとり、妊娠経過を把握することが可能です。検査内容としては、NIEP(非侵襲的出生前検査)などが挙げられ、これらの費用は別途発生する場合があります。
5. 出産と法的手続き
出産が近づいてきたら、親権の確立やパスポート申請といった法的手続きを進め、出産後に子どもを日本へ連れて帰るための準備を行います。国によっては胎児認知などの手続きを出産前に行うことが可能な場合もあるため、妊娠中の早い段階で必要な書類や申請方法を確認しておくと良いでしょう。
代理出産を考える際の注意点と進め方
代理出産には多くのメリットがある一方で、慎重な判断が求められます。ここでは、代理出産を考える際の注意点を2つ解説します。
1.倫理的・心理的な問題
代理母との関係性は、出産前後を通じてどの程度コミュニケーションを取り合うのか、出産後も連絡を取り続けるのかなど、人によって考え方が異なるため事前に話し合いが必要です。また、家族や社会の価値観とのギャップから、周囲の理解を得るのが難しい場合もあります。否定的な目を向けられることも珍しくなく、そのような環境下で責められたり、自分自身を責めてしまったりするジレンマに苦しむことも考えられます。こうした心理的負担を軽減するためには、医療機関やカウンセラーのサポートを受けながら、慎重に手続きを進めることが大切です。
2.法律的なリスク
代理出産が合法的に認められている国や地域でも、法律やルールは国によって大きく異なります。たとえば、専門知識や経験が不足しているエージェントに依頼すると、親権取得のために裁判が必要になるケースや、代理母から追加の金銭を請求されるトラブルに巻き込まれる可能性があります。さらに、国際的な法制度は随時変更される可能性があり、自国と相手国の両方の法律を正確に把握したうえで進める必要があります。実際には「代理母との関係を重視する国」とそうでない国があり、その違いも法律的リスクに絡んでくるため、事前の十分なリサーチが欠かせません。
トラブルを防ぐための進め方とは
倫理的・法律的な課題には、信頼できるエージェントを通じて進めるのがスムーズです。過去の実績や評判を確認し、契約内容や費用、法的サポートの有無が明確かをしっかり確認しましょう。代理母の選定から法的手続きのサポートまで、総合的に対応してくれるエージェントであれば、万が一のトラブルの際にも安心して頼ることができるでしょう。
代理出産の条件を理解し、慎重に判断を
代理出産は不妊治療の選択肢として注目されていますが、国ごとに条件や法律が異なり、費用面や法的リスクも伴います。そのため、事前に十分な情報収集を行い、慎重に進めることが大切です。信頼できるエージェントや専門家のサポートを受けながら、自分たちに合った方法を検討しましょう。
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