卵子提供の現状と課題とは?日本・海外の選択肢や今後の法整備国内外の選択肢の違いや今後の法整備について解説

卵子提供は日本国内では法規制や倫理的な課題から実施が限られています。そのため、多くの人が海外での卵子提供を検討する傾向にあります。

本記事では、日本と海外における卵子提供の現状や、法整備の動向などについて詳しく解説し、卵子提供を検討する方がより安心して判断できるようサポートします。

日本の卵子提供に関する現状

日本では長らく日本産科婦人科学会(JSOG)のガイドライン等により、第三者からの卵子提供はごく限定的な条件下で行われてきました。

国内で非配偶者間の卵子提供を実施できるのは、生殖補助医療専門クリニックのネットワークであるJISART(日本生殖補助医療標準化機関)に認定された施設のみで、厳格な基準の下で実施されています。

国内で卵子提供を行う場合の条件

提供側レシピエント(患者側)
・原則として35歳未満の成人女性(20歳以上)
・身体的・精神的に健康であること
・提供の意思が任意であること
・出自を知る権利や卵子提供の意味について十分な理解があること
・配偶者がいる場合は同意が必要
・提供のための採卵回数が3回未満であること
以下のいずれかに該当すること:
・卵子が存在しない場合(早発性卵巣機能不全等)
・夫婦間体外受精で妊娠・出産に至らず、原因が卵子にあると医師が判断した場合
・重篤な遺伝性疾患の保因者または患者で、着床・出生前検査および妊娠中絶を望まない場合

国内での実施件数と課題

こうした条件下で、国内で実施される卵子提供の件数は非常に少ないのが現状です。JISARTの統計によれば、卵子提供による体外受精は2007年から2024年までの累計で163件にとどまり、出生に至った子どもは107人(双子や第2子も含む)に過ぎません​(2025年1月31日現在)。年間実施数は近年やや増加傾向にあるものの、それでも2024年は24件にとどまっています​。

背景には提供者の不足があり、日本では卵子ドナーは無償ボランティアに頼っているため募集が難しく、条件に合う健康な提供者を確保するのが容易ではありません​。さらに提供者の匿名性(身元非公開)を維持したまま集める必要があることも課題で

提供者になりたいと考えても、家族や周囲に説明しづらい、提供後に「自分の遺伝子を持つ子どもがどこかで育つ」ことへの葛藤、採卵に伴う身体的・心理的負担などから、最終的に辞退してしまうケースも少なくありません。

参照:精子・卵子提供実績

卵子提供における法律面での課題

日本では長年、第三者提供による生殖補助医療に明確な法律がなく、倫理指針に頼る形となっていました。このため、主に以下の項目について課題がありました。

親子関係の明確化

この親子関係の不明確さを解消するため、2020年に「生殖補助医療法」が議員立法で成立しました​。同法では人工授精や体外受精など生殖補助医療の基本理念が定められるとともに、提供卵子で生まれた子の母親は出産した女性(レシピエント)であり、提供者であるドナーは法的な親子関係を有しないことが明文化されています。

つまり、妻以外の卵子によって出生した子であっても、出産した女性が母となり、その夫が父となる(提供に同意している限り)という血統の法的整理が行われました。これにより、ドナーが後から法的な親権を主張する余地を無くし、夫婦が安心して卵子提供を受けられる基盤が整ったと言えます。

出自を知る権利

しかし、2020年の法律ではまだ「生まれた子の出自を知る権利」や提供者への情報開示については十分に踏み込んでいませんでした。従来、日本では提供者とレシピエント夫妻・子との間は匿名性が守られ、子どもが成長しても自分の遺伝上の由来(ドナー情報)を知ることは困難でした。

これに対し、欧米諸国ではドナー由来で生まれた子に一定年齢で出自を知る権利を保障する動きが広がっています。例えばイギリスでは2005年以降ドナー匿名は禁止され、提供児が18歳になれば実名を含むドナー情報の開示請求が可能です。一方で多くの国では依然として匿名提供が維持されており、欧州では約半数の国が法律でドナーの匿名性を守っており子どもが身元を知る権利を持たない状況です​。例えばドイツやノルウェーのように卵子提供自体を法律で禁止している国すらあるほどです。

このように、出自を知る権利をどこまで認めるかは各国で大きく対応が分かれる課題であり、日本国内でも長年議論が続いています。

営利目的の排除

日本では卵子提供について営利目的の排除が重視されてきました。日本産科婦人科学会の倫理指針でも、精子・卵子・胚の提供は無償であるべきとされています​。

提供者への金銭的報酬を認めると「卵子の売買」につながりかねず、倫理的・社会的に問題があるとの考え方です。これに対して海外、特にアメリカ合衆国では卵子ドナーに対する金銭補償(謝礼)が広く行われており、提供一回につき数千ドル規模の支払いが発生するのが一般的です。欧州でも国によって対応は様々ですが、スペインなど比較的匿名提供が主流の国でもドナーへの一定の経費補償は認められています。

日本でも過去には提供者への経費実費の補填の是非について議論がありましたが、現在は医療関係者や倫理学者、法律専門家の間で、概ね以下のような共通認識が形成されています:

  • 必要経費の補償は認める
  • 利益を伴う報酬は禁止する

実際、国内の卵子提供プログラムでは提供者の渡航費・医療費等は受ける側が負担し、提供者本人の金銭的負担がないよう配慮されていますが、それ以上の報酬は支払われません。

海外での卵子提供を選択する理由

日本国内で卵子提供の道が狭かったこれまで、多くの夫婦が海外での卵子提供を選択してきました。ここでは海外が選ばれている理由をいくつか挙げます。

海外の法律が整備されている

例えば、台湾では2007年に制定された「人工生殖法」のもと、政府が管理する形で安全かつ適切な卵子提供プログラムが運用されています。その結果、卵子の過度な「使い回し」や異父兄弟姉妹の過剰発生を防ぐとともに、ドナーの個人情報は原則非公開となり、受け手側は外見的な特徴や血液型などの限られた情報をもとに選択することになります。

アメリカでは連邦法による統一規制がなく、州や各クリニック、仲介エージェントによってルールが異なります。営利目的のサービスが多く、金銭的謝礼が支払われるケースが一般的ですが、近年は一部の州(たとえばコロラド州やワシントン州)で匿名提供の制限や、将来的にドナー情報が開示される動きも見られます。

ドナーの選択肢が多い

日本国内では卵子提供者の数が非常に限られており、希望に沿ったドナーを見つけるのは困難です。

対して、台湾では台中市の大新生殖医療センターなどで常時多数のドナーが登録されており、条件に合うドナーを選びやすい環境が整っています。

アメリカでは、各エージェントやクリニックが独自に多数のドナーを登録しており、人種、血液型、容姿、学歴、健康状態など、細かな条件で選ぶことが可能です。

費用面でも、台湾での治療費はアメリカや欧州に比べ経済的負担が軽減される点が魅力です。

治療を始めるまでの期間が短い

国内では倫理審査やカウンセリングなどの手続きに長い時間がかかり、治療開始までに1年近くかかる場合があります。

一方海外では、既にドナーが登録されているため、台湾では条件に合えば迅速に治療へ移行でき、アメリカでは数ヶ月以内に治療サイクルを開始できることも多いです。

法整備の議論のポイントと今後の見通し

2025年2月5日に、「特定生殖補助医療に関する法律案」が第217回通常国会の参議院へ議員立法として提出されました。今後この法案が成立すれば、日本の卵子提供を取り巻く環境は大きく変わることになるでしょう。以下に、主な論点と今後の見通しを整理します。

議論されているポイント

倫理的観点

 ・子どもの出自を知る権利とドナー匿名性

出自を知る権利とドナーの匿名性については、法案では子どもが18歳以降に国立成育医療研究センターから非特定情報(身長・血液型など)を得られる仕組みになっています。さらに、ドナーの同意があれば氏名の開示も可能になります。

ただし、「ドナーが開示を拒否した場合、子どもの権利が十分に守られないのではないか」という指摘と、「匿名性を撤廃すると提供者が減る恐れがある」という懸念が対立しています。

・ 第三者生殖医療の是非

代理出産は認められておらず、「身体の手段化」や「健康リスク」を理由に除外されていますが、一部の当事者からは「他に方法がない」として解禁を求める声もあります。

さらに、ドナー選別や遺伝子スクリーニングの導入が、障害を持つ子どもを排除する優生思想につながるのではないかという懸念も指摘されています。

法的観点

・親子関係と法律婚の限定

この法案では、対象を法律婚の夫婦のみに限定しており、事実婚・未婚・同性カップルは対象外とされています。そのため、「平等原則に反するのではないか」という批判が強まっています。また、親子関係については、「産んだ母」と「その夫」を法的親とし、ドナーは親子関係に含まれない仕組みになっています。戸籍にもドナーの情報は反映されません。

・無許可仲介・国外犯規定

さらに、無許可の仲介行為や違法取引を防止するため、ネット上での無許可精子提供や闇仲介を摘発する罰則規定が設けられました。しかし、こうした規制が強まることで、当事者が利用先を失う可能性も懸念されています。国外に目を向けると、海外では合法な代理出産などが日本国内では違法とされるケースもあり、子どもの法的地位への影響が問題視されています。

医療的観点

・ 安全性と医療水準

医療の安全性を確保するため、第三者提供を扱う医療機関やあっせん業者には国の許可・認定が必要になります。この認定制により、安全面の向上が期待される一方で、医療機関の事務負担が増えることが課題となっています。

また、ドナーの健康管理についても、感染症検査や提供回数の制限、適切なカウンセリングが必要とされています。特に卵子提供においては、女性ドナーの身体的負担が大きいため、そのフォロー体制の整備が求められています。

技術的課題

技術的な課題としては、ドナーと希望者のマッチング基準の設定が挙げられます。血液型や身体的特徴をどこまで考慮するかは、優生思想に直結する問題をはらんでおり、慎重な調整が必要です。また、近親婚を防ぐ目的で、1人のドナーから生まれる子どもの数をどのように管理するかも重要な検討課題となっています。

社会的観点

この法案は、不妊に悩む夫婦を支援することで出生数増加への効果が期待されていますが、全体としての影響は限定的だとする見方もあります。

また、当事者や市民の反応もさまざまで、「法的枠組みが整うことを歓迎する」という声がある一方で、「出自開示が不十分」「法律婚以外のカップルが排除されている」などの問題点を指摘する声も根強くあります。

今後は、無秩序な民間仲介の禁止による安全性向上が見込まれるものの、これまで非公式な手段を利用していた当事者へのフォローアップも重要な課題となるでしょう。

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今後の課題と実現に向けた道筋

特定生殖補助医療法案は、第三者からの精子・卵子提供を公的に認める日本初の包括的法整備として新たな一歩を踏み出そうとしています。しかし、子どもの出自開示の範囲や非婚カップルへの適用除外など重要な論点も残されており、今後の審議や運用段階での修正が大きな課題となるでしょう。

成立後は、認定制の下で安心・安全な治療体制の確立が期待される一方、当事者や支援団体からは早くもさらなる制度改善を求める声が上がっています。法案はあくまで出発点であり、附則で示される見直し期限(施行後5年)までの間に、各種課題をどう補完していくかが今後の焦点となりそうです。

卵子提供を考える人が知っておくべきこと

卵子提供を受けることを検討している方にとって、治療の選択肢や法制度の理解、信頼できるエージェントの選定は重要なポイントとなります。

国内と海外の選択肢の幅を理解する

卵子提供を考える場合、日本国内では提供を受けられる施設が限られているため、多くの方が海外での治療も検討しています。しかし、海外で治療を受ける場合、治療後に帰国してから十分な医療フォローが受けられるかどうかを事前に確認する必要があります。

また、受ける国ごとに異なる法律や、ドナー情報の開示制度の違いを理解し、自分自身の状況に最も適した方法を選択することが大切です。

法改正の動向を把握する

法改正の動向に注目しておくことも重要です。

先述の特定生殖補助医療法案(2025年提出)は、今国会においては審議入り見送りとなりそうですが、今後この法案が成立すれば、日本の卵子提供を取り巻く環境は大きく変わることになるでしょう。

依頼できるエージェントを知っておく

エージェント選びにあたっては、以下のポイントを重視するとよいでしょう。

日本法人として活動しているか

エージェント選びにあたっては、まず日本法人として正式な会社やNPOを持ち、代表者や所在地などの情報が明示されているかを確認しましょう。

日本法人があることで、契約上のトラブルが発生した際に法的対処がしやすく、日本語で迅速に連絡が取れるという安心感が得られます。一方、連絡先が国外のみであったり、担当者の情報が不明瞭な場合は注意が必要です。

提携先や過去の実績を公表しているか

エージェントが提携している海外のクリニックや医師に関する情報も、信頼度を見極めるうえで重要な判断材料です。信頼できるエージェントは、提携病院の名称や所在地、医師の資格・過去の治療実績などを高く公表している可能性が高く、提携先の国の法制度やドナー登録の状況についても詳しく説明しています。

ドナーへのサポートを行っているか

エージェント自らがドナーの募集や管理を行っている場合は、健康診断や遺伝病検査、提供前後のカウンセリング体制が整っているかを確認しましょう。また、ドナーが自由に辞退できる仕組みがあるかも重要なチェックポイントです。

費用が明確か

エージェントに支払う手数料や現地クリニックでの治療費、ドナー関連経費(渡航費や謝礼など)の内訳が明確かどうかも見逃せません。見積書や費用モデルが公開されているか、不透明な追加請求のリスクがないかをしっかり確認し、費用に関する質問に丁寧に対応してくれるエージェントを選びましょう。

卵子提供を検討されている方はメディブリッジにご相談ください

メディブリッジは、東京都品川に拠点を置く日本法人の卵子提供・代理出産エージェンシーです、豊富なドナー登録と高い成功率を誇る海外提携クリニックで安心して治療を進めるサポート体制が整っています。また、治療費やスケジュール、渡航手配など個別の事情にも柔軟に対応しています。疑問や不安がある方は、まずは公式サイトからお問い合わせください。