受精は卵子と精子の結合によって起こりますが、もともと精子は女性の身体にとっては、異物です。
性交渉により女性の体内に精子が入ると、それに対する免疫反応として、抗体ができることがあります。
これを抗精子抗体といい、原因不明の不妊症の約13%程度が抗精子抗体によるものと考えられています。

抗精子抗体

抗精子抗体は、頸管粘液、子宮膣、卵管内に出現する抗体です。
これが精子が体に入ってくると、精子の表面に結合して、精子の動きを止めてしまいます。

抗精子抗体があるのかを調べるには、ヒューナーテストや血液検査が有効です。
精液検査によって、男性側の結果が基準値を満たしているにも関わらず、ヒューナーテストが不良の場合は、この抗精子抗体が疑われます。

抗精子抗体が陽性の場合でも妊娠が不可能というわけではありません。
抗体価(抗体の強さ)が3~4%の低いケースにおいては、人工授精で妊娠の可能性があります。
この場合、精子を洗浄してから再び子宮に戻すという方法を用います。
20%以上と非常に抗体価が高い場合には、体外受精や顕微授精を用いることで妊娠できる可能性があります。

抗精子抗体があるかどうかは、本人はわかりません。特に自覚症状もありません。
血液検査で診断されるまで、抗精子抗体を持っていることに患者は気づきません。

抗精子抗体を持ってしまう原因は、はっきりとは分かっていません。
抗精子抗体は、精子を外部からの異物とみなして攻撃し排除してしまう抗体で、言ってみれば一種のアレルギーです。
従って、抗精子抗体はアレルギー体質の人に多くみられる傾向があります。
過去に妊娠経験があった人も突然抗精子抗体反応が陽性になることもあります。 抗精子抗体がある人が妊娠を望む場合、体外受精が有効な選択肢となります。
抗精子抗体を持つ患者が体外受精を行ったときの妊娠率は、他の原因による不妊症で体外受精を受けた患者より高いと言われています。
その理由として、抗精子抗体の存在が、受精にはマイナスにはたらくが、いったん受精卵となれば、着床に関してはプラスにはたらくのではないか、という意見もあります。

昔なら、自然妊娠できなければあきらめるしかなかった妊娠も、現代の技術では、様々な可能性があります。
抗精子抗体が陽性だった場合には、体外受精による治療を早めにスタートすることをお勧めします。